修理

機械も時間が経つと壊れるもの。手間の掛つた修理記録を紹介。

日本マランツ スタンダードC450

 購入から25年経過したスタンダードC450が起動しなくなつた。この機種にはアルカリ性の液漏れを起こす不良が発生する通称「4級塩電解コンデンサー」が使はれてをり、それによる故障が多発してゐる。今回全ての面実装電解コンデンサーを交換し復舊させた。

 不良になつた電解コンデンサーの所在によつて故障の様態が異なる。今回修理の進行状況によつて三段階の様態を認識した。第一はマイコンの動作不良であり制御不能の状態。第二はマイコンが動作するものの受信に異常がある状態。第三は正常に受信できるが送信の切り替へ後に異音がする状態である。

c450 
ビネガーシンドロームを起こした液晶板

 第一の状態はマイコンの動作不良であり液晶ディスプレイの表示が不正となり送信も受信もできない。これに対して明らかに液漏れが認められた電解コンデンサー一つとバックアップ用リチウム電池を交換した。その結果マイコンが正常に起動するやうになつた。しかし信号を受信してゐないにも拘らずブーブーといふ音声が出力されてゐた。これを第二の状態とする。

 マイコンは動作するが受信信号に異音がある第二の状態に対してメイン基板にある残りの面実装電解コンデンサーを全て交換した。その結果受信時のブーブー音は消え試験信号が正常に受信できるやうになつた。続いて送信試験を行ふと送信終了後にスピーカーからビョーンといふ音声が出力される異常を発見した。これを第三の状態とする。

 受信は正常だが送信直後の受信時に異音がする第三の状態は、送信終了後にどこかの帰還ループが緩慢に収束するのが音声信号として聞こえてゐるやうだつた。RF基板にシールド板に覆はれたブロックがあるがこれを取り外したところ液漏れした電解コンデンサーを発見した。それを交換し異常が解消した。

 結局47uF/6.3Vの電解コンデンサーは全て不良となつてゐた。ここまで一週間かかつて修理完了。

修理期間 H27.9.25から10.3

日本マランツ スタンダードC450 受信異常

 マランツのC450/C150世代のトランシーバーは4級塩電解コンデンサーの不良による故障で有名である。今回異なる故障モードに遭遇した。信号を受信してゐないにも拘らずFM特有の雑音が聞こえない。このことからFM検波器周辺に異常が起こつてゐると判断した。最終的にFM ICを交換して復舊させた。

 症状は以下の通り。無信号にも拘らずFM特有の大きな雑音が聞こえない。スケルチオフボタンを押しても変化はなく、スケルチは常に開いた状態でありAF回路がミュートされてゐたのではなかつた。信号を入力すると復調信号は通常に比べ極めて小さい。一方Sメーターは動作してゐた。FM ICで発振させてゐる22.595MHzのLO信号は観測され正常の様子。以上からFM検波回路が異常であると判断した。

TK10487
FM IC東光TK10487ブロック図

 原因調査においてFM IC直下にある抵抗のハンダを修正したところFM雑音が出力されるやうになり正常になつた。そこで一時筐体を組み直し実働試験を行つた。しかし一時間で異常が復活した。動作が不審な周辺部品はないのでFM ICが加熱されたことで内部の接触が復舊した可能性を疑つた。

 C450に搭載されてゐるFM ICは東光のTK10487。一部の商社が在庫を持つてゐるが新品調達は期待できない。C450の中古品から部品を移植するのが現実的と判断し調達した。

TK10487
不良になつたFM IC東光TK10487

 IC直下と周辺にあるスルーホールが4級塩ケミコンの不良により傷んでゐないかを導通と顕微鏡による観察で点検し異常のないことを確認した。FM ICを交換し以後正常動作となつた。

 症状発覚R2(2020)年1月、修理完了R2年8月末。期間七ヶ月。

アイコムIC-750

 この機種は秋葉の九十九の展示品を昭和61年の秋に買つたものだ。

 新スプリアス規定を満たしてゐるか28M帯から特性試験を始めたところ三十秒ほどで送信電力が出なくなつた。故障である。
 調べると四つのVCOのうち周波数の高い上二つのVCOが発振してゐなかつた。28M帯を分担する最も高い帯域のVCOは時々信号が出ることもあり不安定な状態。
 切り分けを行ふとVCOのトリマーコンデンサーが接触不良の様子。webでは良くある故障として紹介されてゐる。

bottom units 左のシールドケースの中にあるのがVCOブロック。PLL基板のハンダ面にもシールド板がある。PLL基板の隅、二箇所にTMPコネクターによる同軸ケーブル接続箇所がある。指が届きにくいためこの取り外しが難しい。

pll board シールドケース、シールド板の足は12本もあり取り外すのが手間。

vco case 四隅をハンダで止められた蓋を取り外すのも時間が掛る。

vco 長いリードのトリマーコンデンサーは廃れる部品のため、面実装のトリマーか固定コンデンサーにするしかない。今回は固定コンデンサーの組み合せに置き換へ。 オリジナルの状態はJF3DRI氏の記事をみてもらひたい。
 VCOの制御電圧が規定値になるやうにコンデンサーの組み合せを調整して終了。

H28.4.15記

SRAMバックアップ電池
 メモリーバックアップ用のBR2325リチウム電池の電圧を点検すると3.2Vもあつた。購入してから三十年目にもかかはらず 電圧が維持されてゐる。
 アイコムは推奨交換期間を七年としてゐたらしいがその四倍も保つてゐる。
H28.4.24追記

 バックアップ電池をCR2450のタブ付きに交換した。千石で「CR2450-P2」の名称で販売されてゐるもの。570円也。
H28.4.25追記

br2325取り外したBR2325電池

アイコムIC-706

 平成7年頃に買つたもの。購入当初は受信機として使用したがそれ以後化粧箱の中に戻し、たまにしか出番のない無線機である。
 H29年7月久し振りに箱から取り出すと液晶パネルがビネガーシンドロームに罹つてゐた。箱の中に入れてゐたもののポリ袋に収納してゐなかつたのが発症の原因かも知れない。修理するにも液晶板の交換以外に方法がない。表示が見えなくなるまで症状が進んだらCI-Vでリモコン操作することにしよう。
ic-706 front panel
 不良は他にも発生してゐた。FMモードの送信がをかしい。FMモードだけ周波数が-7kHzもずれるのだ。webを調べるとFM VCOのトリマーコンデンサーに起因する故障であることがわかつた。この機種に良くある故障のやうだ。調整が行へたので部品交換をせず当座を凌ぐことにした。

ic-706 front panel
 ビネガーシンドロームの部分は反転して見える。

H29.8.1記

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